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毎週水曜日掲載の社会保険労務士による労務解説記事、第43回は松本恵梨先生(まつもと社会保険労務士事務所 代表)による解説です。
障害年金の等級はの程度に応じて1級から3級までに分類されており、該当する等級によって受け取れる年金額が異なります。本記事では、障害年金の等級について詳しく解説いたします。
障害年金を受給したら、健康保険の扶養から外れてしまいますか?
ご相談にいらした方からよくいただくご質問の中に「障害年金を受給した場合、税金はどうなりますか?」「障害年金を受給したら、家族の扶養から外れてしまいますか?」等といったものがあります。
本日の内容は、そういった障害年金を受給しているがために出てくる心配事を抜粋してお伝えしていきたいと思います。
今回の記事では、新たに障害年金を受給することになった方(妻)が、社会保険では現在夫の扶養に入っている、と仮定してお話しします。
妻が被扶養者として認定されるには、主として夫(被保険者)の収入により生計を維持されている、ということが必要です。
具体的には、妻(認定対象者)の年間収入が年間180万円※未満であって、かつ、夫(被保険者)の年間収入の2分の1未満である場合、妻は被扶養者として認められます。
※通常、年収基準は「130万円」未満ですが、60歳以上の方、もしくは障害厚生年金を受けられる程度の障害者のある方の場合は「180万円」未満まで要件が緩和されています。
この要件に該当しない場合であっても、妻(認定対象者)の年間収入が年間180万円未満であって、かつ、夫(被保険者)の年間収入を上回らない場合で、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、妻は被扶養者と認められる場合があります。
つまり、もし障害年金額だけで180万円以上の場合、または、障害年金と他の収入を合わせると年間180万円以上の収入になる、という場合は、健康保険の扶養から外れてしまいます。
参考:全国健康保険協会ホームページ 「被扶養者とは?」
健康保険の扶養から外れた場合、妻自身で国民健康保険に加入する必要があります。
通常、健康保険に加入していれば医療費の一部(通常70%)を保険がカバーしてくれ、患者本人の自己負担分は30%のみで済みます。ですが、健康保険に入っていない場合は、医療費が全額自己負担になるため、経済的リスクが非常に大きいです。そのため、健康保険の扶養から外れた場合には、ご自分で国民健康保険などに加入する必要が生じます。
また、市役所などでの国民健康保険の加入手続きをする場合には、社会保険の扶養が外れた日を証明する書類の提出が必要になります。(手続き期限は扶養を外れてから14日以内)
障害年金額だけで180万円以上になる、または、障害年金と他の収入を合わせると年間180万円以上の収入になりそうな場合は、夫(被保険者)の勤める会社側でも手続きが必要になるので、会社の担当部署にお早めに伝えるようにしましょう。
参考:日本年金機構ホームページ「国民健康保険等へ切り替えるときの手続き」
また、健康保険の扶養から外れた場合、国民年金についても別途自分で加入する必要があります。実際には、国民健康保険への加入手続きを市役所などで行う場合、国民健康保険の窓口→国民年金の窓口へとそのまま誘導してくれるケースが多いので、国民年金の手続きが漏れてしまうといったケースは少ないかもしれませんが、健康保険の扶養から外れた場合、今度は自分で国民年金の保険料を支払っていく必要がありますのでご注意ください。
ただし、国民年金には保険料の免除制度があります。要件に該当していれば保険料の支払いが免除される可能性があります。(免除や猶予には手続きが必要です)
免除制度については以下の記事で詳しくお伝えしているので、参考にしてみてください。
年金収入は通常、雑所得となり、一定額を超えた場合には税金の支払いが発生しますが、そういった老齢の年金とは違って、障害と遺族の年金の場合は「非課税」です。
そのため、障害年金を受給するようになっても、原則、所得税と住民税については受給前と変わりません。もし障害年金以外にも収入があるよ、という場合、ご心配であれば税務署にご確認ください。
参考:日本年金機構ホームページ「非課税所得とは、どのようなものですか。」
障害年金は非課税であるため、年末調整や確定申告でも障害年金の金額を申告する必要は基本的にはありませんが、一方で「障害者控除」を受けるためには、年末調整や確定申告にて申告を行う必要があります。
障害者控除とは、納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができる制度をいいます。障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます。控除の金額など、詳細は国税庁ホームページにてご確認ください。
また、障害年金を受給しているから即ち障害者控除の対象、というわけではありませんのでご注意ください。
参考:国税庁ホームページ「障害者控除」
障害年金を受給するにあたって、原則としてご本人やご家族の年収に上限があったり、ご家族の年収が高いという理由でご本人が受給できなかったり、ということはありません。
ただし、初診日が20歳より前にある障害基礎年金については、「ご本人」の所得に応じて減額または支給が停止されます。具体的には下記のとおりとなります。
参考:日本年金機構ホームページ「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」
前年の所得が4,721,000円を超える場合は年金の全額が支給停止となり、3,704,000円を超える場合には年金額の2分の1相当額に限り支給停止とする二段階制がとられています。
なお、扶養親族がいる場合、扶養親族(※)1人につき所得制限額が38万円加算されます。
※対象となる扶養親族が老人控除対象配偶者または老人扶養親族であるときは、1人につき48万円が加算され、特定扶養親族または控除対象扶養親族(19歳未満の者に限る)であるときは1人につき63万円が加算されます。
これは、あくまでも「本人」の所得についての規定であり、ご家族の所得額については考慮されません。
また、障害基礎年金に子の加算額がつく時や、障害厚生年金1級または2級のケースで配偶者の加算額がつく場合には、加算対象者(障害基礎年金だったら「子」、障害厚生年金1・2級だったら「配偶者」)の年収がチェックされます。
具体的には、加算対象者の前年の年収が850万円(所得金額の場合は年額655万5千円)を超えたり等した場合には、加算部分については受給を受けることができませんのでご注意ください。
今回は、「障害年金を受給した場合、家族にも影響があるの?」という面に着目してお話をさせていただきました。
障害年金について相談されたい場合、お住まいの市町村役場や住居地管轄の年金事務所、病院の場合はソーシャルワーカーの方がいるような相談窓口、その他、障害年金請求に力を入れている社会保険労務士などに相談してみると良いと思います。
松本 恵梨(まつもと えり)
茨城県出身。
明治大学卒業後、金融機関に勤務。個人ローンや法人融資を担当。
その後、体調を崩し一時期入院。入院中に目にした「社会保険労務士による仕事の相談窓口」のチラシをみて、社会保険労務士の仕事に興味を持った。
結婚・出産・離婚を経て、シングルマザーとなった後に社会保険労務士の資格を取得。
株式会社TECO Designに入社し、クラウド勤怠管理システムの設定代行チームに所属。
現在は障害年金専門の社会保険労務士として開業。人々の支援に力を注いでいます。