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【第24回】障害者雇用担当者に知ってほしい年金のこと

社会保険労務士による労務解説記事が毎月3回(第1.2.3水曜日)にUPされます。

 

 

 

 

 
 

 

 

はじめに

令和6年度から、企業が雇用しなければならない障害者の割合が2.3%→2.5%に引き上げられました。

同時に、障害者を雇用しなければならない対象事業主の範囲も、労働者を「43.5人」以上を雇用する企業から、
「40人」以上を雇用する企業に範囲が拡大されました。
つまりこの数字は、全労働者40人のうち1人は障害者を雇うことが義務付けられた、ということです。

今回は、これから障害者雇用を始める事業主の方や、新たに障害者雇用の担当になられた方に向けて、障害者雇用制度の概要や、障害年金について基本的な内容をお伝えしたいと思います。

 

 

障害者雇用の状況

厚生労働省が発表した「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」によると、現在民間企業に雇用されている障害者の数は約64万人となっています。

前年比では4.6%増加しており、20年連続で過去最高を更新しています。

雇用障害者数と実雇用率の推移

出典:厚生労働省パンフレット「障害者雇用のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/000767582.pdf

 

 

障害者雇用率制度

国は、

  • 雇用・就業は、障害のある方の自立や社会参加のための重要な柱であること
  • 障害のある方が能力を最大限発揮し、適性に応じて働くことができる社会を目指す

という考えから、事業主に対して、従業員の一定割合(法定雇用率)以上の障害者の雇用を義務付けています。

その割合(法定雇用率)は、障害者雇用促進法に基づき、5年ごとに見直しが行われています。法定雇用率は段階的に引き上げられており、令和6年4月からは2.5%(40人以上企業が対象)、令和8年7月からは2.7%(37.5人以上企業が対象)となることが決定しています。

障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

出典:厚生労働省パンフレット「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」
https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf

 

 

対象となる傷病

障害者を雇用しなければならない対象事業主には、

  • 毎年6月1日時点での障害者雇用状況のハローワークへの報告
  • 障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」の選任(努力義務)

といった義務が課せられています。

事業主は、毎年6月1日現在の、高年齢者の雇用に関する状況および障害者の雇用に関する状況をハローワークに報告する義務があります。
(高年齢者雇用安定法52条第1項、障害者雇用促進法第43条第7項)
毎年報告時期になりますと、ハローワークから報告対象事業所に報告用紙が送付されますので、必要事項を記載の上で7月15日までに返信することになっています

また、常時雇用している労働者数が100人を超える事業主に対しては、
法定雇用率を満たせなかった場合にペナルティとしてお金を納めなければならない、といった「障害者雇用納付金制度」というものが存在します。

具体的には、不足する障害者数1人につき月額50,000円の納付が必要になります。

この趣旨は、障害者雇用に関する事業主の社会連帯責任を果たしてもらおう、というものです。

法定雇用率を満たしていない事業主から納付金を徴収する一方で、障害者を多く雇用している事業主に対しては調整金や報奨金等が支給されます。

事業主の申告に基づき調整金が支給されます。

障害者雇用のご案内

出典:厚生労働省パンフレット「障害者雇用のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/000767582.pdf

なお、法定雇用率は、次の計算式によって算出します。

障害者雇用率制度について

出典:厚生労働省パンフレット「障害者雇用率制度について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000859466.pdf

※特殊法人、国及び地方公共団体についてはまた別の基準が設けられています。本記事では記載を割愛します。

 

 

障害のある方の数え方

障害者雇用率制度の対象となる障害者は、身体障害者、精神障害者、知的障害者が対象です。

具体的には、

  • 身体障害者:身体障害者手帳1級~6級に該当する方
  • 知的障害者:児童相談所などで知的障害者と判定された方
  • 精神障害者:精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方

を指します。

制度開始当初は身体障害者のみが対象でしたが、平成10年には知的障害者が、平成30年には精神障害者が対象になりました。

障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度では、雇用する障害者の数を、下の表のように数えます。

簡単に言うと、一週間に何時間働いているのか(週所定労働時間)によって、カウントの仕方が違ってきます。

障害者雇用のご案内

出典:厚生労働省パンフレット「障害者雇用のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/000767582.pdf

 

通常、週所定労働時間が30時間未満の短時間労働者の場合には、1人につき0.5カウントとなりますが、2023年4月から、精神障害者である短時間労働者に対しては1人とカウントするという特例が施されています。(精神障害者の算定特例)

さらに、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の場合、通常では0.5人にもカウントされないのですが、2024年4月から、精神障害者、重度身体障害者および重度知的障害者については、0.5人としてカウントできるようになりました。

以上のように、障害者雇用促進法は何度も法改正が行われています。

ここまでは、障害者雇用の概要についてお伝えしました。

次に、統計から分かる障害者雇用の現状を簡単に見ていきましょう。

 

 

最企業規模別の状況

全ての企業規模において、障害者の雇用者数、実雇用率(おまかに言い換えると、労働者に占める雇用障害者の割合)、法定雇用率達成企業の数は前年より増加しました。

詳しくお知りになりたい方は、厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001180701.pdf)にてご確認ください。

 

 

最新統計から分かる障害別での割合

次に、障害別での雇用状況はどうなっているのかみていきましょう。

「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」によると、雇用者のうち、身体障害者は約36万人(対前年比0.7%増)、知的障害者は約15万人 (同3.6%増)、精神障害者は13万人(同18.7%増)と、身体・知的・精神のいずれも前年より増加している結果になりました。

特徴として、特に精神障害者の伸び率が大きいようです。

障害者雇用においての精神障害者の伸び率が大きい要因の一つとしては、精神障害を有する患者数自体が増えていることが考えられると思います。

疾病別にみると、アルツハイマーが15 年前と比べて約7.3 倍、うつ病などの気分(感情)障害が約1.8 倍、神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害が約1.7 倍と、増加傾向が顕著になっています。

精神疾患を有する患者数の推移

出典:厚生労働省ホームページ「精神疾患を有する患者数の推移」令和4年6月9日 第13回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf

 

 

おわりに(障害年金について)

今回は障害者雇用制度の概要についてみてきました。
最後に、障害者を雇用するにあたって、ぜひ障害年金の存在を知っておいていただきたく、ご説明したいと思います。

「働いていると障害年金はもらえないの?」というご質問を受けることがあります。
確かに、精神障害など、傷病によっては就労状況が審査に影響を与えることがありますが、
具体的に「月に〇〇万円以上稼いだらNG」や「フルタイムの場合は完全NG」などといった、一律のルールがあるわけではありません。
お一人お一人の状況に応じて、総合的に審査が行われます。

実際に、近年、働きながら障害年金をもらっている人は増えています。詳しくはこちらの記事をご覧いただけると幸いです。

人事や総務のご担当者の中には、従業員がケガや病気で働けなくなった際の休職のお手続きをされたことのある方は多いと思います。

その従業員がいざ復帰し、「まだまだ身体はしんどいけど、生活のため、無理してでも働かなきゃな・・・」という方もいらっしゃるかもしれません。
その方がもし障害年金を受給でき、少しでも収入面での安定を得られた場合、時短勤務に変更する等して、いまより体調に合わせた働き方ができるようになるかもしれません。

障害者雇用枠で働かれている方でも、障害年金を受給できる可能性があります。

例えば、精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは、就労している際に考慮すべき要素として、
「就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する」としています。
簡単に言うと、障害者雇用で働いている場合、障害年金をもらえる可能性がありますよ、ということです。

出典:厚生労働省「精神障害にかかる等級判定ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12512000-Nenkinkyoku-Jigyoukanrika/0000130045.pdf)

企業側から従業員に障害年金を案内するケースはまれかもしれませんが、
障害者雇用を進めるにあたって(会社の仲間として障害者を迎えるにあたって)、
一制度として障害年金の存在を知っておいていただくことで、いつか何かの助けになるかもしれません。

もし、実際に障害年金請求について相談窓口が必要になった場合は、お近くの年金事務所や、障害年金に力を入れている社会保険労務士等に相談してみると良いでしょう。

 

以上

 

 

 

執筆プロフィール

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