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【第31回】遺族年金のあらまし

社会保険労務士による労務解説記事が毎月4回(第1.2.3.4水曜日)にUPされます。

第31回目は社会保険労務士松本先生(まつもと社会保険労務士事務所代表)による解説です。

 
 
 
 

遺族年金とは?

遺族年金とは、一家の働き手や年金受給者が亡くなった際に、その家族に支払われる年金です。遺族であれば誰でも受け取れるわけではなく、亡くなった方に生活を支えられていたか(生計維持要件)等を満たした人でなければ受け取ることができません。

亡くなった方の年金加入状況や、子どもがいるかどうか等の状況に応じて「遺族基礎年金」や「遺族厚生年金」のいずれか、またはその両方が受け取れます。

 

 

イメージ

具体的な計算(遺族厚生年金)はかなり複雑なので、正確な計算が必要な場合には年金事務所にご確認されることをおすすめしますが、受給額についてのおおまかなイメージをふくらませるために、下の図をご確認ください。

出典:簡単!2ステップでできる ピッタリ保険ナビ 遺族年金

遺族年金 もらえる金額

亡くなった当時の年金加入状況や、子どもの有無、配偶者の年齢などによって、受給額等が変わってくることがお分かりいただけると思います。

 

遺族年金を受け取ることができる遺族

亡くなった方の各状況によって、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方がもらえるのか、遺族基礎年金のみになるのか、などが変わってくることが、上の図でおおよそイメージしていただけたと思います。

次に、遺族年金を受け取ることができる遺族の範囲についてみていきましょう。

まず、遺族年金を受け取れる可能性がある遺族は、死亡当時、亡くなった方によって生計を維持されていた以下の方です。

  • 配偶者
  • 父母
  • 祖父母

具体的には、配偶者が最優先され、その次に子、さらにその次に父母といった順序で受給権の優先順位が移ります。

遺族年金の種類と優先順位

参照:遺族年金ガイド 令和6年度版

 

遺族には、以下のような年齢要件もあります。

  • 子・孫(「子のある配偶者」 「子のない配偶者」などの「子」を含む)
    • 死亡当時、18歳になった年度の3月31日までの間にあること
    • 20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にあること

      ※子、孫は、婚姻していない場合に限ります。

      ※死亡した当時、胎児であった子も出生以降に対象となります。

    • 遺族基礎年金:子のある配偶者である場合、年齢要件はありません。
    • 遺族厚生年金:死亡当時、55歳以上であること。(受給開始は60歳からになります。)ただし、遺族基礎年金を受給中の場合に限って、60歳より前でも遺族厚生年金を合わせて受け取ることができます。
  • 父母、祖父母
    • 死亡当時、55歳以上であること。(受給開始は60歳からになります。)

 

次に、遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がありますが、まずは、自営業などで国民年金に加入中の方が亡くなった場合に遺族が受け取れる、「遺族基礎年金」についてみていきましょう。

 

 

遺族基礎年金の受給要件

遺族基礎年金は、次の1〜4のいずれかの要件に当てはまる方が亡くなった場合に、亡くなられた方に生活を支えられていた配偶者と子がいる場合は配偶者に、子だけのときは子に年金が支払われます。

  1. 亡くなった方が国民年金の被保険者である間に死亡したとき。*
  2. 亡くなった方が国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき。*
  3. 亡くなった方が老齢基礎年金の受給権者であった方(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限る) が死亡したとき。
  4. 保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方が死亡したとき。

*1と2については、保険料納付要件を満たしていない場合は受給できません。

 

その他、子の条件としては、18歳に到達した以後の最初の3月31日を過ぎていないこと、または20歳未満で一定の障害者であること、などがあります。

 

 

 

遺族厚生年金の受給要件

次に遺族厚生年金についてみていきましょう。

遺族厚生年金は、会社員など、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、次のいずれかの要件に当てはまる場合、死亡した方によって生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫または祖父母が受け取ることができます。

  1. 亡くなった方が、厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき。*
  2. 厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日**から5年以内に死亡したとき。*
  3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が、死亡したとき。
  4. 老齢厚生年金の受給権者であった方(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限る) が死亡したとき。
  5. 保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方が死亡したとき。

 

*①、②については保険料納付要件があります。

**初診日とは、死亡の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日をいいます。

 

遺族には、以下の条件があります。

  • 妻:年齢に関係なく遺族となる
  • 子・孫:18歳に到達した以後の最初の3月31日を過ぎていないこと、もしくは20歳未満で1級または2級の障害の程度であること
  • 夫、父母、祖父母:55歳以上であること

 

配偶者については、婚姻の届出はしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者(内縁の配偶者)も含まれます。

ただし、30歳未満の子のない妻は、5年間の有期給付となります。

一定の条件を満たす妻には、中高齢の寡婦加算がつく場合があります。詳しくは下記ホームページにてご確認ください。

参考:日本年金機構ホームページ 中高齢寡婦加算

 

子については、死亡した方の実子または養子を指します。養子縁組されていない配偶者の子は含まれませんので、ご注意ください。

 

 

保険料の納付要件

遺族基礎年金の受給要件1と2、遺族厚生年金の受給要件1、2については保険料の納付要件が求められます。

具体的には、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の「前々月」までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と、保険料免除期間をあわせた期間が「3分の2」以上あることが必要です。

 

万が一、生活が厳しい場合などに保険料が未納のままだと、この納付要件を満たせずに、遺族基礎年金を受け取ることができない場合がありますが、免除や納付猶予制度を適用の場合には、受け取る条件に含まれます(注:一部免除において、減額された保険料を納付していない場合を除きます)。

国民年金には、保険料の免除制度というものがあります。生活が困窮しており保険料の納付が厳しい場合などには、そのまま納付せずに放置しておくのではなく、一度市役所などにご相談のうえ、ご自身の状況に合った免除制度等の活用を検討いただくと良いでしょう。

保険料の免除制度については、こちらの記事も参考にしてみてください。

 

 

おわりに

今回は、遺族年金の種類、受け取れる遺族の範囲、受給要件といった、制度の概要についてお伝えしました。

遺族年金の場合、受け取れる年金額の計算が複雑になってくるケースがあるため、詳しくお調べになりたい場合は年金事務所への相談をおすすめします。

 

以上

 

 

 

執筆者プロフィール

松本先生

松本 恵梨(まつもと えり)

茨城県出身。
明治大学卒業後、金融機関に勤務。個人ローンや法人融資を担当。

その後、体調を崩し一時期入院。入院中に目にした「社会保険労務士による仕事の相談窓口」のチラシをみて、社会保険労務士の仕事に興味を持った。

結婚・出産・離婚を経て、シングルマザーとなった後に社会保険労務士の資格を取得。
株式会社TECO Designに入社し、クラウド勤怠管理システムの設定代行チームに所属。

現在は障害年金専門の社会保険労務士として開業。人々の支援に力を注いでいます。

まつもと社会保険労務士事務所

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