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【第18回】働きながらでも障害年金はもらえるの?

社会保険労務士による労務解説記事が毎月3回(第1.2.3水曜日)にUPされます。

第18回目は、松本先生(まつもと社会保険労務士事務所代表)による解説です!

 
 
 

はじめに

障害年金は、病気やケガなどで一定の障害状態になった場合に大切な収入の支えとなり、定期的な年金収入によって生活の安定に繋がるものであることを前回お話ししました。

近年、障害年金の受給権者数は増加傾向にあり、その中には働き盛り世代の方も多くいらっしゃいます。

今回の記事では、働きながら障害年金を受給する際のポイントについて見ていきましょう。

 

障害年金をもらっているのは何歳くらいの人が多い?

最新の統計では、障害年金を受給している人数が最も多い年代は、障害基礎年金では50〜54歳、障害厚生年金では60〜64歳となっています。

障害年金をもらっているのは何歳くらいの人が多い?

 

近年の法改正により、企業には65歳までの雇用確保が義務付けられました。一般的には年齢が上がるにつれて病気に罹るリスクは上昇するので、現役働き盛り世代が高年齢化している日本において、働きながら障害年金をもらえる可能性を知っておくことは、あなたにとっても決して無駄なことではないと思います。

 

障害年金受給者全体で見た場合の障害種別割合

障害年金支給件数を障害の種類別で見てみましょう。

障害年金は様々なご病気の方が受給できる可能性がありますが、障害種類別にみていくと、受給者数の多さには傾向があります。

令和2年のデータをご覧ください。基礎年金・厚生年金合計での集計値をご覧いただくと分かりやすいですが、精神障害・知的障害での支給件数が多いことが分かります。

障害年金受給者全体で見た場合の障害種別割合

参照:第51回社会保障審議会年金事業管理部会 資料3-1(https://www.mhlw.go.jp/content/12508000/000669908.pdf

 

民間企業における障害者雇用の障害種別割合

令和5年6月1日時点の障害者雇用状況の集計結果によれば、雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新し、雇用障害者数は約64万人(対前年比 4.6%増加)、実雇用率 2.33%(対前年比 0.08 ポイント上昇 )となっています。

身体障害者、精神障害者、知的障害者のいずれも前年より増加しており、その内訳は身体障害者が約36万人、知的障害者が約15万人、精神障害者は約13万人でした。

参照:令和5年 障害者雇用状況の集計結果(https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001180701.pdf

 

障害年金と障害者雇用のデータから考える

障害年金では、精神障害・知的障害を理由に受給されている方の割合が大きく、一方で障害者雇用においては身体障害の方の割合が大きいことが読みとれると思います。

精神障害を抱えて就労することの大変さはもちろんですが、障害のことを会社に告げずに働いておられるケースもあるようです(「クローズ就労」等といいます)。

 

障害年金をもらっている人の就業率

先ほどは障害者雇用の状況について触れましたが、次は障害年金をもらっている方の就業率をみていきましょう。

下の図をご覧いただきたいのですが、過去10年と比べ、全ての年代において就業率は上昇しています。つまり、働きながら障害年金をもらっている人が増えていることが分かります。

障害年金をもらっている人の就業率

出典:第5回社会保障審議会年金部会 資料2 障害年金制度https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_230626.html

 

障害年金をもらいながら働いている方の障害種別割合

働きながら障害年金をもらっている人が増えている、という話をしました。次のデータでは、障害種類別でその割合をみていきましょう。

割合の大きい順に、①知的障害(58.6%)、②身体障害(48.0%)、③精神障害(34.8%)となっています。

一方、過去値との比較においては、全ての障害種類別において就労率が上昇しています。特に精神障害の割合が大きく増えていますが、精神障害の場合、働きながら障害年金を申請するには注意が必要です。

障害年金をもらいながら働いている方の障害種別割合

出典:第5回社会保障審議会年金部会 資料2 障害年金制度https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_230626.html

 

申請する際のポイント

ここまでは主にデータをご覧いただきましたが、働きながらでも障害年金を受給できる可能性があることがお分かりいただけたと思います。

就労の形態としては一般雇用、障害者雇用、就労移行支援、就労継続支援と様々あるわけですが、個々の障害の種類や生活状況の程度によっても結果が変わってきます。

具体的に、以下1と2のケースでは、大きく結果が変わってきます。

 

1.人工関節・人工透析や身体の障害の場合

これらの障害は、数値などにより障害年金の等級が明確になっているため、お給料の額や労働時間といった就労状況は、等級認定にほとんど影響がありません。

 

2.精神障害・がんなどの内部疾患の場合

精神障害を抱えながら障害年金をもらっている方の割合が増えているとお話ししましたが、これらの障害の場合、申請の際に注意が必要です。

上記の人工関節などと違って、時期によっては体調に波があったりと、障害の程度を数値で明確に示すことが難しいことが影響しています。

そのため、お仕事の状況によっても障害年金の審査に影響を与える(不支給になりえる)可能性が高いわけですが、具体的に「月に〇〇万円以上稼いだらNG」や「フルタイムの場合は完全NG」などといった、一律のルールがあるわけではありません。お一人お一人の状況に応じて、総合的に審査が行われていきます。

例えば、精神障害で障害年金を受給されている方の中には、「フルタイムだけど、職場で特別の配慮を受けながら就労している」という方もいらっしゃいます。

“特別な配慮”の例をあげたら枚挙にいとまがないですが、一例としては、仕事内容を単純・往復的な事務作業に限定してもらっていたり、障害を理由に在宅での仕事に限定してもらっている、等があると思います。

「正社員だから」「フルタイムだから」という理由だけで申請を諦めるのではなく、「日常生活を送る上でどんな支障があるのか」「お仕事をするうえで一体どんな制限があるのか」「職場でどんな配慮を受けているのか」等について、いま一度ご自身で振り返り、その詳しい内容を申請の際に盛り込むことが大切です。

また、日頃から主治医とコミュニケーションを取れていることも大切です。先ほどお話ししたような、お仕事中に職場でどんな配慮をしてもらっているかだったり、お仕事中のお身体の様子、その他ご自身の障害が原因で日常生活を送るうえで困難を感じていることがあれば、通院の際に積極的に主治医に伝えましょう。

ついつい、通院にて医師に最近の様子を尋ねられると「大丈夫です」と答えてしまいがちな方も多いと思います。その時その時の不調だったり、日常生活の大変さなどを、できる限り積極的にお伝えできると良いと思います。

 

おわりに

今回は、働きながら障害年金を受給する際のポイントについてお話ししました。

障害年金申請までには、主治医へ定期的に状況報告をして〜初診の病院が現在の病院と異なれば別途書類を取り寄せて〜現在の主治医には診断書を依頼して〜また別に自分で申立書を作成して・・・等、多岐の過程を経る必要があります。

お仕事をしながら障害年金を申請するのは、心理的にも身体的にも負担が大きくなる可能性があります。このような場合には、社労士に障害年金申請を代行してもらうことを検討しても良いと思います。

初回相談を無料としている事務所も多いので、依頼にかかる費用面のご心配を含めて、まずは気軽に専門家に相談してみると良いでしょう。

 

以上

 

まずはお気軽にご相談してみませんか

 

 
松本先生

執筆プロフィール

松本恵梨(まつもと社会保険労務士事務所 代表)

茨城県出身。
明治大学卒業後、金融機関に勤務。個人ローンや法人融資を担当。
その後、体調を崩し一時的に入院。入院中に目にした「社会保険労務士による仕事の相談窓口」のチラシを見て社会保険労務士の仕事に興味を持つ。
結婚・出産・離婚を経てシングルマザーとなった後に社会保険労務士の資格を取得。株式会社TECO Designに入社し、クラウド勤怠システムの設定代行チームに所属。

まつもと社会保険労務士事務所(社労士STATIONページはこちら)


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