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CLOUD STATIONでは、管理部門、士業事務所の皆さまへのお役立ちコンテンツとしてセミナーを定期開催しています。
本記事では、辻本郷税理士法人とのコラボ企画として実施をした「電子帳簿保存法基礎セミナー」のレポートをお送りします!ぜひ、ご一読ください。
辻・本郷税理士法人 税理士 菊池典明
DX事業推進室/税理士。2014年税理士登録。2012年に辻・本郷 税理士法人大阪支部に入社。株式会社のほか医療法人、社会福祉法人、公益法人等の税務・会計に関する業務を中心に、法人の事業承継や個人の相続コンサルティングを担当。2015年より経営企画室に所属し、クライアントのクラウド会計の導入やDXの推進などにも携わる。2021年より現職。
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概要
電子帳簿保存法とは、原則紙での保存が義務付けられている帳簿書類について、一定の要件を満たした上で電子データでの保存を可能とし、また電子的に授受した取引情報の保存義務などを定めた法律です。
噛み砕いて表現しますと、大きく二点の特徴があります。
一点目、「紙で保存を求められている帳簿・書類を電子で保管できるように定めたもの」ーつまり、紙から電子に置き換えて保存することですね。
二点目は、電子で交付する・された電子データの取り扱いについて定めたものだ、ということです。こちらは、もともと電子データで受け取ったり送ったものを、電子データのまま保存するということです。
書類という点では、国税関係帳簿・国税関係書類・電子取引の三つに大別することができます。
「国税関係帳簿」とは、総勘定元帳や現金出納帳などが該当します。こちら電磁的記録等による保存が要件となっています。
「国税関係書類」はさらにB/S、P/Lなどの「決算関係書類」「取引関係書類」の二つに分けることができ、前者は電磁的記録等による保存・後者はが要件となっています。後者は、契約書・納品書・見積書などが該当し、自己が発行したのか・相手から受領したものかによって要件が異なります。自己が発行した場合には、電磁的記録等による保存・スキャナ保存が要件になり、相手から受領した場合には、スキャナ保存が要件になります。
また、取引関係書類は「重要書類」「一般書類」と更に区分が分かれています。
「重要書類」は、モノ・金の取引に直結する書類。「一般書類」は、見積書、検収書など取引に直結せず確認するような書類です。
一方で「電子取引」は、メールやインターネット上からダウンロードする書類が該当し、電子取引保存義務という別の要件が定められています。
今回の電帳法改正の特徴は、4つです。
1つ目は、税務署長の事前承認の廃止。
以前は、税務署長より適応を受ける三ヶ月前に承認を受ける必要がありましたが、今回の改正にて廃止をされています。以前は、その承認を受けるためにもまた三ヶ月、半年と期間がかかってしまっていました。それと比べると、ぐっとスピーディーな対応ができるかと思います。
2つ目は、適正事務処理要件の廃止です。
内部監査の要件ですが、担当者一人のみではなく、二人以上で正しい処理がされているかを都度確認しましょうというものでした。
3つ目は、特にスキャナ保存で大きい要素だったタイムスタンプの要件が緩和されました。
受領者やスキャンする人ごとに異なっていた保存期間が、「最長約2ヶ月と概ね7営業日以内」に延長・統一されました。
最後4つ目は、検索要件の緩和です。
今回の改正では、取引先・取引日・取引金額の三項目が検索できれば良いと緩和されました。
検索項目が多いと検索能力は高まりますが、入力にあたっての事務的な負担もかかっていました。
一番の注意点は、2022年1月1日からは電子取引の電子保存が義務化されるということです。すべての企業、個人事業主が対象で、紙で出力して保管することは認められなくなります。国税関係書類、国税関係帳簿は従来どおりで紙・電子どちらでも保存が可能です。
罰則規定としては、下記二点が定められているので、ご注意ください。
・国税関係帳簿書類及び電子取引データについて、電帳法の要件に従った保存がされていない場合、税法上保存義務がある帳簿書類として取り扱わない →青色申告の承認の取消対象になり得る
・スキャナ保存、電子取引データの改ざん等による不正が合った場合、重加算税を10%加重される
「最低限、電子取引について電子保存が必要である」とお考え頂くと、要点を抑えて省エネで対応いただけるかと思います。
一方で、いきなりこのような厳しい措置を無闇矢鱈に・・・ということはあまり考えられないかと思います。実際に国税庁出身者からも同じようなヒアリングができました。
それほど厳密な対応を当初からということは考えづらいですが、義務化されるということがわかっていますので、いずれにせよ対応を進めることは必要かと思います。
電磁的記録等による保存要件の概要を、こちらにまとめました。
※優良な電子帳簿とは、改正前の要件を満たす電子帳簿とほぼ同じものです。申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減されるというメリットがありますが、所定の保存要件を満たした上で、所轄の税務署長宛に届出書を提出する必要があります。
優良電子帳簿として事前に届け出を行うことで、過少申告加算税が5%軽減されます。従来の厳しい要件を満たす場合には、届け出が必要ではあるもののインセンティブが与えられるということです。
それ以外であれば、関係書類等の備付・見読可能性の確保を満たしていれば、電帳法の要件を満たすことができます。一点、税務調査協力という項目が追加されていますが、こちらは読んでいただければ「当たり前だろう」と思われるかもしれません。通常の税務調査協力と同じような心持ちで臨んでいただければと思います。
次に、改正後にどのような流れで保存をしていけば良いのかをご説明します。
まずは、利用システムの確認が必要です。保存要件が緩和されましたので、スムーズに適応を検討いただけるようになるかと思います。税務署による事前承認も不要になりましたので、電磁的記録についてはそう工数をかけること無くご対応いただけるかと思います。
スキャナ保存要件は、このように変更されました。
真実性の確保以外は、電磁的記録等による保存要件と同じ内容です。
スキャナ保存の流れにおいても、税務署による事前承認が廃止になりました。また、受領者の自署が不要になり、モバイルカメラ、スキャナなどでの書類の電子化をしやすくなりました。
タイムスタンプについても、先ほどお話したように訂正削除の履歴が残るシステムに保存することでタイムスタンプが不要になったり、期間が二ヶ月以内に統一されたりといった変更点がありました。
また、最後にシステムに保存した後にも、適正事務処理要件といった内部統制の要件が不要になっています。
電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引のことです。これらはすべて電子取引に該当します。
電子取引の保存要件は、「真実性の要件」「可視性の要件」の2つに分けることができます。
上記の内、いずれかを行うこと。
上記の内、全てを行うこと。
次に、電子取引の電子保存義務化対応について、より詳しくご説明します。
まず、先ほどご紹介した「真実性」からですが、こちらは電子取引の種類ごとに要件が異なっています。
電子メール・インターネットのホームページ、ペーパーレスFAX、DVD等の記録媒体は、タイムスタンプもしくは事務処理規程が保存要件です。
それ以外は、一義的には訂正削除の記録ができる、もしくは訂正削除ができないシステムが要件です。ですが、タイムスタンプもしくは事務処理規程でカバーすることも可能です。
諸々の費用を勘案しますと、訂正削除の防止に関する事務処理規程の備え付けをおすすめしています。もともとは救済措置的なものだったかと思いますが、網羅的にカバーすることができ、コストも不要であるために、まずはこの方法をご紹介しています。
もう一つの要件である「可視性」では、検索機能確保がポイントです。
選択肢としては、検索機能に対応した請求書等保存ソフトを利用する、しないの二択です。
請求書等保存ソフトを利用する場合には、こちらの機能があることが要件となります。
請求書等保存ソフトを利用しない場合には、こちらの二つの方法を取ることができます。
※以降は上記3,4と同様
これまでご紹介した内容を踏まえ、電子取引の電子保存義務化対応についてまとめます。
まずやっていただきたいこととしては、「電子取引の把握」です。
自社において、いつ・どこで・どのような電子取引が発生しているのかを把握します。営業担当者の立替経費、交通費のICカードによる支払いデータには、特に注意が必要です。
いずれにしても、自社の状況にあった保存方法を検討することが重要です。
電子帳簿保存法への対応方法の検討
最後に、電帳法への対応や、それによる影響についてご紹介します。
電子取引の義務化対応後のバックオフィス業務
電子取引の義務化対応後、バックオフィスの業務は変わらざるを得ないかと思います。
従来は紙、電子データの保存方法については、「紙 or 電子」で任意選択ができる状態でした。一方で、改正後は電子データの保存は電子のみの保存が義務化されます。
したがって、紙と電子データの混在が発生し、バックオフィス業務の生産性が下がったり、電子データを決められた内容に応じて保存する手間がかかったりということが発生します。
いずれにしてもひと工程かかることは避けられません。
ペーパーレス、リモートワーク、バックオフィスの生産性向上の大きな流れができあがってきていますので、この機会に紙ベースの取引や業務プロセスの見直しをして頂くと良いのではないでしょうか。
電子帳簿保存法への対応方針の検討
とはいっても、「電子的取引に係る電磁的記録」は義務化されていることですので、喫緊の課題としてご対応いただくことをおすすめします。
おさらいですが、大きな分岐点として「請求書等保存ソフトを使用するか否か」があります。また、その前に「電子取引の把握」も大きなハードルとなりますので、ご留意ください。
対応は任意ですが、国税関係帳簿・国税関係書類についても要件が緩和されきていますし、会社の業務フロー、取引全般を電子化するといったように、こちらも電子化が図れるかと思います。
その場合には、ペーパーレス化、リモートワークの導入などの目的に従って、対応範囲・スコープを定めていただけると良いかと思います。
QA
Q 伺っていますと、クラウドシステムなしの運用はかなり難易度が高いように思えたのですが、いかがでしょうか?
菊池様 はい、正直なところ、システム抜きでの対応は相当大変なことになろうかと思います。電子取引の一問一答が整備されたのが、今年の7月のことでして、そこから各社様が開発などに着手されているかと思います。
リリースが年明け、2月に入ってからということも伺います。
場合によっては、現時点では保存ソフトを利用せずに対応し、ある程度出揃ったタイミングで検討いただくのも一つの方法かと思います。
Q.海外との取引は対象でしょうか?
菊池様 対象です。
Q.紙の書類を画像で送ってきた場合は対象になるのでしょうか?
菊池様 その場合には、スキャナ保存の要件が適用されます。
Q.納品書、請求書などをメールでやり取りし、そのメールを保存している場合には要件を満たしているのでしょうか?
菊池様 受信トレイの中では、真実性・検索性の要件を満たさないので、要件を満たしていないということになります。
以上、「電帳法(電子帳簿等保存法)基礎セミナー」のレポートをお送りしました。
各社の状況ごとに、導入・運用の具体的な課題は異なりますので、ご質問やご相談顔ありの方は辻本郷様、CLOUD STATIONまでお気軽にご連絡ください。