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【第29回】デジタル化が進む中で求められる「ヒューマンスキル」の重要性と育成方法

社会保険労務士による労務解説記事が毎月4回(第1.2.3.4水曜日)にUPされます。

第29回目となる今回は、初めてご寄稿いただく社会保険労務士成澤先生(社会保険労務士法人スマイング 代表社員)による解説です。

目次

はじめに

なぜヒューマンスキルが重要なのか?

デジタル時代に求められるヒューマンスキル

ヒューマンスキルの育成方法

まとめ

はじめに

コロナ禍以降、これまで以上に社会全体でデジタル化が急速に進んでいます。

特に、業務効率化や生産性向上など、企業活動においてはデジタル技術の活用は不可欠なものとなっています。デジタル化が進む中、人間ならではの能力である「ヒューマンスキル」の重要性も増しています。

なぜヒューマンスキルが重要なのか?

各種業務のデジタル化によって、これまで人間が行っていた単純作業や定型業務は自動化されつつあり、これにより、より高度な判断や複雑な問題解決、そして創造性が求められる業務が増加しているとされています。

例えば、RPA(Robotic Process Automationの略称。PCなどのコンピューター上で行われる作業を人の代わりに自動で実施してくれるソフトウェア。)の市場規模は年々拡大し続けており、ICT市場調査コンサルティングの株式会社MM総研が発表した資料によると、2022年9月時点で大・中規模企業のRPA導入率は45%と約半数を占めており、現在準備中・検討中の企業約20%を含めると今後さらに導入が加速していく見込みとあります。

1つの業務をみた場合、その業務全体が自動化されているケースは少なく、業務の一部が自動化され、残りの部分は人が対応することも見受けられます。この場合、結果的に業務の効率化や生産性向上につながっていないこともありますので、デジタル活用状況については、実際の業務がどの程度自動化されているか常に確認と修正が求められます。

そして、人でなければできない高度な判断や複雑な問題解決(この辺りもAIに取って代わられそうですが)、創造性が求められる業務も求められています。これらの業務を遂行するためには、デジタル技術だけでは補えないヒューマンスキルが不可欠なわけです。

ヒューマンスキルとは、コミュニケーション能力、問題解決能力、創造性、リーダーシップ、共感力など、人間関係や社会生活を送る上で必要な能力を指し、デジタル化が進む現代においても、これらの能力はビジネスの成功に欠かせない要素です。

デジタル化時代に求められるヒューマンスキル

デジタル化時代に求められるヒューマンスキルとして、以下が想定されます

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力として、相手の感情を読み取り、適切な言葉を選び、円滑な人間関係を構築する能力が求められます。伝える力、聴く力、質問する力、共感力、非言語コミュニケーション、状況に応じた対応力などを意味します。

デジタルツールを活用したコミュニケーションが増える中、円滑な意思疎通やチームワークを築くためのコミュニケーション能力はますます重要になっています。

問題解決能力

問題解決力は、直面した課題や問題に対して、原因を分析し、適切な解決策を見出し、実行に移す能力のことです。論理的思考力、創造性、判断力などを総合的に駆使して、問題を解決に導きます。

問題解決力を高めるためには、様々な問題に直面し解決することで経験を積み、問題解決に必要な知識を身につけ、問題解決のフレームワークやツールを学び実践することで向上させることができます。

デジタル化によって、複雑な問題や予測不能な事態が発生する可能性が高まっており、これらの問題に対して、論理的思考力や分析力、そして多角的な視点から解決策を導き出す能力が求められます。

創造性

デジタル技術は、新たなアイデアやイノベーションを生み出すための強力なツールです。しかし、それを最大限に活用するためには、人間の持つ創造性や発想力が不可欠です。既存の枠組みにとらわれず、新しい価値を創造する能力が求められます。

デジタル化時代に求められる創造性は、これまでと異なり、デジタルツールやプラットフォームを活用し、新しい表現方法やアイデアを生み出すことが求められますし、インターネットを通じて膨大な情報にアクセスし、既存の情報を組み合わせたり再解釈したりすることで、新しい価値を生み出す能力が重要になります。

またデジタル技術の進化は非常に速く、常に新しいツールやプラットフォームが登場してきますので、変化に対応し、新しい技術を学び続ける姿勢が求められます。

リーダーシップ

デジタル化によって、組織の在り方や働き方も大きく変化しています。このような状況下では、変化を恐れず、チームを牽引していくリーダーシップが求められます。メンバーのモチベーションを高め、目標達成に向けてチームを導く能力が重要です。

デジタル化時代のリーダーには、デジタルリテラシーは当然のこと、デジタル化によって変化する社会やビジネス環境を理解し、組織の将来像を明確に示す能力も求められるでしょう。さらにはメンバーの自己成長を促し目標達成を支援するリーダーシップなど、多様なスキルとアプローチが求められる立場といえます。

共感力

一見すると共感力は重要性が薄れているように思われるかもしれませんが、実際には共感力はこれまで以上に重要性を増しています。デジタル化によって、コミュニケーションが希薄になりがちだからこそ、相手の立場や感情を理解し、共感する能力が重要です。チームメンバーとの信頼関係を築き、良好な人間関係を構築するためには、共感力が必要不可欠です。

デジタルコミュニケーションでは、表情や声のトーンなどの非言語的な情報が欠落しがちです。共感力を高めることで、相手の感情をより深く理解し、誤解や摩擦を減らすことができます。また顧客のニーズや課題を深く理解し、共感に基づいたサービスを提供することで、顧客満足度を高めることができます。デジタルツールを活用しながらも、人間的な温かさを伝えることが重要です。

ヒューマンスキルの育成方法

デジタル化時代に求められるヒューマンスキルの育成には、以下の方法があります。

研修やセミナーへの参加

コミュニケーションスキルやリーダーシップ、問題解決能力などを向上させるための研修やセミナーを積極的に活用します。コミュニケーションスキルアップ研修、問題解決力アップのためのワークショップなど。

OJT (On-the-Job Training)

実際の業務を通じて、先輩や上司からヒューマンスキルを学ぶことも有効です。フィードバックを受けながら、実践的にスキルを磨くことができます。経験豊富な先輩社員がメンターとなり、若手社員のヒューマンスキル育成をサポートするメンタリング制度、異なる部署や職種を経験することで、多様な視点やスキルを身につけるジョブローテンション、実際のプロジェクトに参加し、実践的な経験を通してヒューマンスキルを磨くプロジェクト型学習など。

自己啓発

読書やオンライン学習など、自己啓発を通じてヒューマンスキルを高めることができます。心理学やコミュニケーションに関する書籍を読んだり、オンライン講座を受講したりすることで、知識やスキルを深めることができます。

組織文化の醸成

ヒューマンスキルの育成には組織文化の醸成が欠かせません。心理的安全性を確保し、失敗を恐れずに意見を言える、チャレンジできる雰囲気作りを心がけることが必要です。また上司や同僚からのフィードバックを積極的に受け入れ、自己成長につなげることができる環境を用意します。さらには多様な価値観やバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用し、元から所属する者にも刺激を与えられる多様性を活かしたチーム作りを行うなども一考です。

まとめ

デジタル化が進む現代において、ヒューマンスキルは企業の競争力を左右する重要な要素です。企業は、自社に合った効果的なプログラムを構築し、社員のヒューマンスキル向上を支援し、デジタル時代に対応できる人材育成に取り組みましょう。

執筆者プロフィール

成澤 紀美
特定社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)
社会保険労務士法人スマイング 代表社員
株式会社スマイング 取締役
クラウドBPO株式会社 代表取締役

大手システムインテグレーション企業・外資系物流企業・住宅建設不動産企業でシステムエンジニアとして長年にわたり技術開発・システム設計を担当。人事管理システム構築を行った事がきっかけで人事・労務に興味をもち、人事労務コンサルティングを行う。

IT業界に特化した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。企業の視点に立った労務管理セミナーや研修を行っている。

「IT業界 人事労務の教科書」「自社に最適な制度が見つかる 新しい労働時間管理 導入と運用の実務」「労務管理の実務が丸ごとわかる本」「改定版)IT業界 人事労務の教科書」「エンジニアが働き方で困ったときに読む本」、近著は「ポストコロナの就業規則見直し」を出版。

社会保険労務士法人としては、IPO(株式公開)向け労務デューデリや人事労務対策支援にも注力し、監査法人や証券会社と企業間のコーディネーターの役割も担っている。

顧問先企業の約8割がIT関連企業。

2018年よりクラウドサービスを活用した人事労務サービスで業務効率化を図ったり、 クラウドサービス導入時の困ったを解決する「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」サービスを展開。2018年10月のマネーフォワード社主催のMFクラウドExpoで「クラウドサービスアワード2018大賞」を受賞。

2021年10月より給与計算などBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)に特化した「クラウドBPO株式会社」を共同設立し、企業ニーズへの対応を進めている。

成澤 紀美
特定社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)
社会保険労務士法人スマイング 代表社員
株式会社スマイング 取締役
クラウドBPO株式会社 代表取締役

大手システムインテグレーション企業・外資系物流企業・住宅建設不動産企業でシステムエンジニアとして長年にわたり技術開発・システム設計を担当。人事管理システム構築を行った事がきっかけで人事・労務に興味をもち、人事労務コンサルティングを行う。

IT業界に特化した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。企業の視点に立った労務管理セミナーや研修を行っている。

「IT業界 人事労務の教科書」「自社に最適な制度が見つかる 新しい労働時間管理 導入と運用の実務」「労務管理の実務が丸ごとわかる本」「改定版)IT業界 人事労務の教科書」「エンジニアが働き方で困ったときに読む本」、近著は「ポストコロナの就業規則見直し」を出版。

社会保険労務士法人としては、IPO(株式公開)向け労務デューデリや人事労務対策支援にも注力し、監査法人や証券会社と企業間のコーディネーターの役割も担っている。

顧問先企業の約8割がIT関連企業。

2018年よりクラウドサービスを活用した人事労務サービスで業務効率化を図ったり、 クラウドサービス導入時の困ったを解決する「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」サービスを展開。2018年10月のマネーフォワード社主催のMFクラウドExpoで「クラウドサービスアワード2018大賞」を受賞。

2021年10月より給与計算などBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)に特化した「クラウドBPO株式会社」を共同設立し、企業ニーズへの対応を進めている。

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