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【第6回目】年俸制の導入・運用のポイントと手続き

社会保険労務士による労務解説記事が毎月2回!(第1水曜日と第3水曜日)にUPされます。

第6回目は社会保険労務士三谷先生(三谷社会保険労務士事務所代表)による解説です。

今回は「年俸制の導入・運用のポイントと手続き」です!

ぜひ、ご覧ください!!

 
 
 

年俸制は、労働者の年間の労働対価を一定の金額として前もって定め、その金額を月ごとや四半期ごとなどの一定の期間に分けて支給する給与制度を指します。簡単に言うと、「給与の支給額を年間単位で決定する給与体系」です。

 

年俸額は、年間の労働者の業績や貢献度に基づき決定されることが多いため、成果主義との相性がよいとされています。また、企業にとっては、年間の人件費が固定されるため管理がしやすい、というメリットがあります。

 

年俸制といえども、毎月給与を支給する必要があります。労働基準法で、賃金の毎月払いの原則が定められているからです。これは、賃金は毎月1回以上支払わなければならない、という原則のことです。そのため、年俸制であっても、その年俸額をどう割り振るのかは自由ですが、月ごとに支給する必要があります。

 

【年俸制導入・運用のポイント】

(1)労働時間の管理は必要

年俸制だからといって、原則1日8時間以内、週40時間以内という法定労働時間が免除されるわけではありません。そのため労働時間の管理は適切に行う必要があります。

 

(2)時間外労働手当

年俸制でよく勘違いされているのが、時間外労働手当の支払いについてです。「年俸制だから残業代を支払わなくてもいい」というのは誤解です。時間外労働手当、休日労働手当、深夜手当を支払わなければなりません。ただし、管理監督者の場合には、深夜手当の支払い以外は不要です。

 

(3)年俸に時間外労働手当を含む場合

(2)と関連して、そもそも年俸制に時間外労働手当を含むことはできるのか、という相談がよくあります。例えば、「年俸600万円(残業代年間120時間分含む)」という契約内容です。この場合、基本給と時間外労働手当が明確に区別されて支給される場合には違法ではありません。そのため、上記の例では、例えば、次のように契約書に記載しておく必要があるでしょう。

・年俸600万円

・月額50万円(基本給46万円、残業代4万円(時間外労働10時間分))

この場合も、時間外労働時間が10時間を超えた月には、その分の支払いは別途必要になりますし、仮に10時間未満であっても4万円の支払いは必要になります。

 

(4)賞与

賞与については、どう支払うかは会社の自由です。例えば、賞与は無しで、年俸額を12等分して毎月12分の1の額を支払う方法や、年俸額を14等分して毎月14分の1の額を支給し夏季と冬季に各14分の1を賞与として支払う方法、などです。労働者にとっては生活費の設計もありますので、賞与を月額給与に組み込むのか、それとも賞与を別途支払うのかは、重要な検討事項といえます。

 

(5)社会保険料

特に月給制から年俸制へ移行する際には気を付けたい点です。なぜなら、年俸制に変更した場合、従業員(及び会社)の社会保険料の負担額が変動することが多いからです。下の表は、年収600万円の場合で、「月給制+賞与」と「年俸制」で試算した内容です。両者では、年額でみると社会保険料の負担額はほとんど変わりませんが、月々の負担額が年俸制の場合は増えることになります。そのため、従業員への説明をしっかりしておかないと、「手取りが減った」などの不満が出てくることもありますので、ご注意ください。

 

  月給制 年俸制
年収額 600万円 600万円
月額支給額 40万円 50万円
賞与(夏季1か月、冬季2か月) 120万円 0円
社会保険料

 

(年額)

月額分 健康保険料 250,176円 305,100円
厚生年金保険料 450,180円 549,000円
賞与分 健康保険料 61,019円 0円
厚生年金保険料 96,990円 0円
社会保険料計 858,365 854,100円
社会保険料の差異(月給制-年俸制) 4,265円

※社会保険料は協会けんぽの兵庫県における保険料率を参考

※介護保険料は含まない

 

この他、賞与額によっては年俸制に移行すると社会保険料が大幅に増えるケースもあります。必ず試算して従業員へ説明するようにしましょう。

 

(6)評価制度との連動

年俸制は、評価制度と連動させることがうまく運用するポイントです。1年間の評価をした上で、次年度の年俸額を決定するため、評価制度がしっかり整っていることが必要です。年俸制がうまくいくかどうかは、評価制度にかかっていると言っても過言ではありません。

 

【年俸制導入・運用の手続き】

(1)就業規則への記載

年俸制は、給与体系(賃金)の一部です。賃金に関することは、就業規則に必ず記載しなければならない事項とされています。対象者を限定する場合は、その旨も記載しておきましょう。例えば、「年俸制は、課長以上の管理職の者に適用する」という内容です。

 

(2)労働条件通知書への明記

就業規則と同様、労働条件通知書にも賃金に関する事項は必ず明記しなければなりません。新規採用者だけでなく、従来の月給制から年俸制に変更する者に対しても、労働条件通知書を改めて発行することをおすすめします。

 

(3)対象労働者への十分な説明と合意を得る

特に、月給制から年俸制へ変更する労働者には十分な説明が必要です。年功序列型から年俸制へ移行する場合には、従来の年収額を下回る労働者がでてくる可能性があります。また、社会保険料の件でも触れましたが、年俸制に変更することで労働者の社会保険料の負担が増える場合もあり得ます。これらは不利益な労働条件の変更になりますので、説明を尽くしたうえで、必ず従業員の合意を得るようにしましょう。

 

以上

 

【執筆プロフィール

三谷 文夫 (みたに ふみお)
社会保険労務士/産業カウンセラー
三谷社会保険労務士事務所 代表

中小企業の就業規則・人事制度構築を得意とする社会保険労務士
保有資格:アンガーマネジメントファシリテーター 


1977年大阪府生まれ。兵庫県在住。
慶應義塾大学卒業後、地元兵庫県の有馬温泉旅館でフロントスタッフとして働くも、1年
で退職し、大学時代から挑戦していた司法試験に再挑戦。25歳頃までアルバイトをしなが
ら試験合格を目指すも断念。その後は、転職を繰り返し、営業、販売、事務、接客に携わ
る。合間に東欧への放浪の旅をしながら、気ままに過ごすも、将来に不安を感じてきたと
ころで、28歳の時に製造業の総務課に採用していただく。
総務課では、社会保険、給与計算などの事務を始め、採用、評価、従業員満足度向上施策
労働組合や地域住民との渉外交渉、労務費の予算作成・実績管理など、幅広い業務に従事
「従業員が相談しやすい総務スタッフ」を意識して職務に取り組む。また、工場での勤務
ということもあって、労働安全衛生の重要性を実感するとともに、労務管理では現場のス
タッフとの関係性が大切であることを学ぶ。在職中に社会保険労務士の資格を取得。
2013年、「多くの中小企業経営者に労務管理の大切さを伝えたい」という想いが募り、
社会保険労務士事務所を開業し独立。労務に留まらない経営者の話し相手になることを重
視したコンサルティングは、優しい語り口調も相まって人気がある。また、自身の総務課
経験を活かしたアドバイスで顧客総務スタッフからの信く、これまでに関与してき
た顧客60上。
労務相談をメインに、ライアント企業にマッした就業規則の作成、用のサートま
う人事評価制度の構築が得意。
その、メンタルルス、承認力ラスメント、りの感とのき合い健康経営
SDGsをテーマに、工会所、工会、自治体PTAその数講演新入社員研修
管理職向け行動力アップ研修等、年間20回以登壇する企業研修講師でもある。
2020年から関西某私大の非常講師300の学生に労働法の義で教鞭をとる。
趣味は 喫茶店でコーーをみながらステリ小むこと。ランング。
家族は、ども4人、金魚のきんちゃん

三谷社会保険労務士事務所(社労士STATIONページはこちら)

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