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社会保険労務士による労務解説記事が毎月3回(第1.2.3水曜日)にUPされます。
給与計算業務をアウトソーシングして楽になると思ったら
「逆に工数が増えてしまった」
「計算ミスが多くて困っている」
「給与の出来上がり遅くて振込が間にあうか毎月ハラハラしている」
よく聞く言葉です。
なぜ、このようなことになるのでしょうか。給与計算業務の一連の流れを見てみましょう。
①明確なルールをもとに、
②正確な情報を期限内に1か所に集めてアウトソーシング先に送って
③正確な情報を給与システム正確にインプットして
④給与システムで作成したデータが正しくにアウトプットされているかチェックをして
給与データが完成します。この流れの中でひとつでも不備があれば、正しい給与データは完成しません。
ひとつずつ見ていきます。
チェック事項
□ 就業規則や賃金規程が会社の実態に合っているか
□ 規程に記載のない運用ルールを補う給与計算マニュアルや勤怠管理マニュアルがあるか
□ 労働基準法等の法令、社内ルールをもとに、給与システムに「正しく設定」されているか
□ 発生の都度判断するようなあいまいなルールはないか
など
チェック事項
□ 勤怠の打刻もれや打刻訂正などの集計が本人の確認のうえ最終確定されているか
□ 会社内の届出(結婚や出産、通勤交通費の変更など)が会社内の給与担当者に集まっているか
□ 上記仕組みが従業員に周知され、正しく運用されているか
□ 業務フローの整理、効率化を行っているか
など
アウトソーシング先の業務範囲はその契約内容によって異なりますが、一般的には、①、②は会社が行う事項です。しかし、すべてを会社内で整えることは難しい場合が多いですから、専門家に入ってもらい相談し、指導してもらいながら構築することをお勧めします。
③、④はアウトソーシング先が行います。会社は正しい給与計算ができるように、正確な情報をアウトソーシング先に送ります。
会社に明確なルールが整備されてなく、従業員の入退職などの情報が正確に定めた期限内にアウトソーシング先に伝わらないと
となってしまい、アウトソーシングをしたのにぜんぜん楽にならない、となってしまうのです。
アウトソーシングについて、特に給与計算業務のアウトソーシングについて見てきました。アウトソーシングを成功させるには、会社内のフローの見直しなど業務改善、また、会社とアウトソーシング先がひとつの「給与計算チーム」であるという考え方も大事であると思います。
この「会社内の業務改善 + 給与計算チーム作り」を、会社に寄り添い一緒に構築してくれるアウトソーシング先を選んでいただくのが、アウトソーシング成功への近道です。
給与計算や勤怠管理など労務周りにはお金をかけたくないという話はよく聞きますが、遅刻や欠勤の状況把握は従業員の離職の前兆として事前に対策を取ることが出来ますし、給与の間違いは会社への不信感増大につながります。
給与計算や勤怠管理業務を正確に行うことは、従業員の雇用を継続するために不可欠で、実は会社経営において大変重要な部分なのです。
アウトソーシング先にすべて任せておけば、給与がすべて自動的に出来上がるわけではありません。アウトソーシング=丸投げではない、ということを肝に銘じておいてくださいね。
以下に、アウトソーシング先を選ぶポイント、給与計算チームを作るためのポイント、給与計算業務の内製化の成功事例を挙げておきましたので、ぜひ参考にしてみてください。
□ 会社にあったシステムを提案してくれる
□ ITツール、クラウドシステムに詳しい
□ 会社の給与、勤怠ルールについて詳細なヒアリングしてくれる
□ 初期設定後もフォロー体制がある
□ 運用についても相談に乗ってくれる
給与計算をチームで行う上で重要な行動習慣をまとめました。アウトソーシングを活用する場合でも、会社内で内製化している場合でもより良いチームを作るために必要なことをまとめています。
□ 毎月チームで振り返りをしているか
給与計算で最も重要なのが振り返りです。アウトソーシング先と一緒に出来るとより良いです。
□ ミスが2度繰り返さない仕組みがあるか
あってはいけませんが、ミスが発生してしまうのが給与計算です。重要なのはミスを繰り返さないことです。
必ずミス発生の原因を解明し再発防止対策をしましょう。
□ マニュアル頼みになっていないか
マニュアル通りに処理するだけになってしまうと、これはリスクです。
なぜその処理をしているのかを必ず意識しましょう。
□ 知識をインプットする仕組みがあるか
知識はとても重要です。労働基準法や他社の休暇制度の事例などを多く知り、理解しましょう。
□ 新しいシステムを学び続けているか
労務に限らず新しいツールは必ず触り、学ぶべきです。今のツールよりも安く、早い可能性もあります。
□ 従業員と対話しているか
従業員が何を感じているか、制度やルールに対してどういう感情を持っているか。直接話をして、関わっていくことで感じる部分です。
□ 自動化+人間性を組み合わせているか
自動化は、業務の処理を効率化することには有効ですが、問題を発見するためには従業員の勤怠を眺めることも重要です。
勤怠データの羅列から離職リスクやメンタルの問題を察知することができると言いますが、そういった人間的なセンサーを持っておくことも重要です。
元々、給与計算をアウトソーシングしていたが内製化(=業務を自社で行うこと)をすることで、業務改善につながった介護事業会社の事例を紹介します。
従業員の増加で、アウトソーシング先の対応が困難になった介護事業会社。新たなアウトソーシング先の選定に迫られていた頃、クラウドサービスに着目していたこともあり、クラウド導入サポートと事務の工程改善を専門家に依頼。その結果、業務効率化が進み、単なる事務代行以上の指導が顧問の先生から受けられるようになった。クラウド上で顧問の先生とオンラインでつながることにより、経営課題を共有できるようになったため、リアルタイムに確認しながら経営相談が出来るようになった。
業務を内製化するためには、ある程度給与計算の知識があり処理することが可能な人材が会社にいることなどが必要ではありますが、アウトソーシング以外にクラウドを利用して内製化するという選択肢もあることを知っておいていただければと思います。
以上