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スペシャルトーク〜これからの労務を語るパート2〜

この度、TECO Designは社会保険労務士法人TECO Consultingを立ち上げました。
先日、公式Youtubeにて、新しい取り組みを始めた背景、労務業界への思いなどを語るライブ配信をお送りしました。

本記事では、書き起こし形式にて内容をご紹介します!

 

ぜひ、ご一読ください。

 

【動画・音声がお好きな方はこちら】

 

【前回はこちら】

スペシャルトークVol.1

 

【紹介】

株式会社TECO Design 杉野

 

中四国大手の社会保険労務士事務所に入社。給与計算部門のリーダー、IT推進室室長。社内のマニュアル整備、IT推進などに注力。

またグループ内でコンサルティング会社を設立し、顧客データベースの移行作業や、クラウド労務ソフト等の導入、また業務フローの見直しなどを含めたバックオフィスの業務設計を中心に実施、100件以上の給与・労務・勤怠ソフトの移行作業を実施。

 

社会保険労務士法人TECO Consulting 伊藤 

 

埼玉県入間市出身。大学卒業後、社会保険労務士を取得。東京都内の社会保険労務士事務所で約3年間、HRテックを活用したバックオフィスDX化のコンサルティング経験を積む。その後、上場準備中(N-2)のベンチャー企業に参画し、上場審査に向けた労務管理体制の構築を行なう。ベンチャー企業を中心に、バックオフィスDX化をメインとした人事労務コンサルタントとして独立後、TECO Consultingの代表社員に。

納品主義について

納品主義について

 

杉野:今回は、前回話した社労士業界の「納品主義」についてお話していきましょうか。まず、就業規則ですよね。前回の話では、一度作って終了ではダメだよねという話しでしたよね。

 

伊藤:僕、納品主義って本当に課題だと思っていて。素晴らしい経験、知識を持っている社労士の先生方が、法令遵守、会社を守るための規則を作っていらっしゃる。

でも、労務の方が知りたいのは、会社の組織文化に沿ってどう運営していけば良いのか?なはずじゃないかなと。そして、そこをサポートしている方は少ないような印象があります。

 

杉野:ルールブックを作って置いておく、だけになっちゃうんだよね。従業員に何かトラブルが起こった時に、どこを読んでどうすれば良いのか?とか、が分かることが要件の一つだと思うんですが、どこに置いてあるのか知らない・内容がわからないなんていうこともね、よく聞きますよね。

 

伊藤:どこに格納してあるか分からない、周知できてないのでしょうね。

 

会社の経営者の方や人事労務の方が対応に迷ったときに、どう対応したら良いのか聞かれることがあるんですが、コーポレート側としての考え方の順番があるんです。まず、トラブルが法令上どうなのか、定めがなかったら規定はどうなっているのか・・・ここで各種規定が出てきます。その次に、経営者の判断があり、従業員の意見がある。

 

これがセオリーなんですが、法令と規定を抜いて、最初に経営判断をしてしまう場合も結構あって。下から突き上げられて、経営判断をしてという順番になりがちなんですよね。

 

でも、ベースは法令・規定ありきなんですよね。

 

杉野:法令遵守と、会社のルールである規定が先に来るべきなんだね。

 

伊藤:このフローの中に規定があるのに、規定の判断や運用の説明がない納品主義ってどうなの?って。

 

杉野:なるほど。渡してしまって、さきほどの手順があるのにと。

 

伊藤:就業規則に収まらなくて、社労士が納品する商品って三六協定もありますよね。社労士の方からすると、期限までに全事業所を届け出するのでいっぱいいっぱい。

 

杉野:そこがゴールになっちゃうんですよね。

 

伊藤:本当は、この会社なら何がベストなのか?労働時間の上限ってどうするべきなのかとか、運用を伝えていくべきなんですけど・・・。でも、まず作るで終わってしまっている。

形ができても、会社は良くならないし、労務担当が困ってる状況は変わらないのって、おかしいなと思うんですよ。

 

杉野:その武器というかモノを置いて、運用に乗せるところって、労務担当の方ひとりじゃ難しいから外部に頼られるわけですが。それでもまだまだ埋まってない溝がある、ということですね。

 

伊藤:そうです、そうです。

 

杉野:クラウドサービスも似てるところがあるんですよね。使おうとしたら、そんなのすぐなんですよ。法人のカード番号入力して、決裁すればいいだけです。

だけど、それじゃあ運用はできないですよね。給与計算どうすれば良いのか、とか・・・つまり、労務の方向けのオンボーディングってすごいスペース空いてますよね。

 

TECO Designはそこをお手伝いしているわけだけど、まだまだ課題はありますよね。

 

伊藤:社労士の方の中には、事業会社の人事ご出身の方もいらっしゃると思うんですよ。自分がどこで悩んだのかを思い出せば、と思うんですが・・・資格を持つと、社労士とはこうあるべきだに収まってしまいがちかなと。

 

杉野:もったいないよね。お客様をもっとよくできる関係性を築けるはずなのに。給与計算なんかも、本来は振込に間に合うためにすることじゃなくて、どういう過去がありこれからどこに行くのかとか、残業が増えてるのかどうかとかも説明しなきゃいけなかったんですよね。

 

僕が社労士事務所にいた時は、計算しました・データを納品します、で終わってしまってたので、反省です。

 

伊藤:まず、お客様が求めていることは「安全」。点はできると思うんですが、点と点をつなぐ・・・労務担当の方が「残業時間が増えているけど大丈夫?」「昨年のこの部署はこれだけ残業があったので、対応したほうが良い」と従業員や経営と会話ができるといいですよね。

 

労務データを経営に使う企業って、少ないですよね。

 

杉野:例えば給与計算をして、末締め翌月25日に支払うというスケジュールだと、「残業気をつけてね」なんてコミュニケーションをしてももう過ぎたことなんですよ。従業員からしたら、しらんがなと。

残業のピークが来る前に伝えないといけない、本来は残業が減るようにすべきだし、そのための仕事をしたいですね。

 

伊藤:そのためには、業務フローにも切り込んでいく必要がありますね。

 

例えば、残業時間のモニタリングはいつ・どのタイミングでしているのか、部署ごとに見ているかとか。80時間超えたひとのデータに対して、産業医面談を進めているかとか、必要性を感じてもらえるようになっているかとか。

 

杉野:線、引いちゃいますよね。納品しました、受け取ってください!になってしまいがちですけど、ここを繋いでいきたいー線にしたいですね。

 

伊藤:従来の顧問契約のように、業務の一部を代行するというのは、マインドも仕事の受け方も変えないといけないですね。

労務へのアンテナ・関心について

労務へのアンテナ・関心について

 

杉野:日本企業の役職者ー特に小売店の店長さんや製造業の工場長の方って、通常業務に加えて労務的な役割もになってるじゃないですか。シフト管理とか、あと扶養の範囲内で働きたい方の調整とか。

で、店舗で知っている知識を総動員して雇用契約書を作ってもらうんだけれど、上がってくる契約書の内容はめちゃくちゃだったり。

 

グローバルだと、HRのモデルの中でオペレーションはセンター、企画は労務の方や経営者が担当して、HRBPが各部署にいて人事労務の適材適所を探すということをしてるんですよね。日本ローカルで考えるとその役割って必要なのか、とか。中小企業だとそれは人員的に無理だし、どこまで求めるの?って。

 

伊藤:そうですね・・・店長や工場長、各部署の所属長に対しては、労務管理の基礎的なところは会社が情報をしっかり落とすべきなんじゃないかなと。

 

ちょっと前にびっくりしたことがあって、薬局でパートをされている方が三六協定に書いてあることをご存知で、僕に「うちの三六協定って・・・」と声をかけてくださったんですよね。その方は、労務についてお詳しいとかご興味があるとかっていうわけじゃないんですよ。

会社がしっかりと、情報が浸透するように働きかけてるんですよね。

 

一方で、人事担当の方が内容をご存知無い場合もあって、この差は一体何なんだろうなと。

 

杉野:その差って、どうやって埋められるんだろうね?内部で自発的になのか、外部の社労士やコンサルが発信しているのか。

 

伊藤:世の中に、情報ってすでにたくさんあると思うんですよね。却って、見きれなかったりするのかな。

 

杉野:コメントいただきましたね。「確かに、産業医面談の理由で”あなたの体調のため”と説明しているところは少ないような気がします」。

やっぱり、そうなんですね。やってるところも少ないし、そもそも知ってるところも少ないのかもしれないね。

 

あと、例えば「パートでも有給がある」とかっていうルールを、現場の管理監督者が知らないっていうのはきっとあるでしょうね。僕、学生のときにアルバイトをしてたんですよ。その時に、パートの方から「ここは5分だからさ」って言われて。

 

伊藤:あ、丸めがですね。

 

杉野:そうそう。で、親戚で集まったときなんかに、「普通15分じゃん」とか言われて、全然分からないからウンウンって相槌打つだけ打って。「僕のアルバイト先は5分だよ」って話すと、おお〜良いね〜って言われたりしたんですよ。

 

この辺もあるのかな、知識の格差というか・・・身近じゃなさすぎて・・・。

 

伊藤:この間、Youtubeで「経営者が東京都の最低賃金を答えられるか」という動画を見たんですよ。5〜6人の方がいらっしゃったんですが、答えられたのは2人くらい。本来、経営者がウォッチすべきことなのに、関心事からは外れてるんだなと思いましたね。

 

杉野:経営者側の問題、従業員側の問題で二分されることってあるじゃないですか。どちらも情報を知らないというか。これって、どこから手を付けるものなんですかね。

 

伊藤:うーん、やっぱり経営者は事業を伸ばすことで精一杯なので、労務担当の方が問題定義をしたほうが良いとは思います。一方で、労務担当の方もオペレーションを回すので手一杯で、なかなかそこまでできないんじゃないかなと。となると、知る機会がないから、経営者も知らないと。

 

杉野:何が正しい、ということはないと思いますが、何かしら公式があると良いんじゃないかなと。

それぞれが、それぞれの役割をこなすと。RPGでパーティーに職業を揃えてクリアするのと同じで、会社の中にはこの役割があって当たり前よねという共通認識を持って、そこに「HR」を確立すべきですね。

 

HRというと、人を採用して管理して切る・・・というイメージがあると思うんですが、そうじゃなくてカルチャー醸成や従業員への投資を担当するとかですね。

またコメントいただいてますね、ありがとうございます。「従業員目線だと、給与明細の詳細・計算ロジックが知りたい」、なるほど。時給単価はかろうじてあったりしますが、確かに割増率とか無いですよね。何だったら、固定残業代書いてないところもありますもんね。

 

伊藤:そういうところは問題外です、とバッサリ行きたいところですがね。

 

杉野:「数字の意味が分かれば、扶養人数が変わったらすぐに報告しなくてはいけないなど、労務担当の負担意識にも繋がる」と。

そうですね、全体的に繋がると言うか、みんながそういう意識を持つことが当たり前になりますよね。

 

確かに、従業員向けの説明とか教育って、あんまりしないですよね。

 

伊藤:自分のクライアント様で、30名くらいの企業なんですが、全従業員の計算式を別用紙に参照として出しているところがあるんです。有給休暇の計算方法はこれ、平均賃金の計算方法はこれ・・・と。

でも、実は従業員の方は全然見ていなくて、活用されてなかったんです。

 

杉野:それ、まさに納品主義だ。

 

伊藤:そうなんですよ。あと、WEB明細の開封率も結構ひどかったりしますよね。

 

杉野:そうそう。導入前は、スマホでも見られるようにしようとか工夫をするんだけど、いざ蓋を開けてみると開封率が低くてびっくりしちゃったりね。

 

伊藤:やっぱりシステム入れて終わり、じゃなくて「明細の開封率を上げるためにはどうするのか」と一歩先に踏み込むのが労務担当や社労士の新しいミッションなんじゃないかなと。

 

社労士の役割とは?

社労士の役割とは?

 

杉野:「伊藤先生の顧客満足度高そう」、コメントありがとうございます。高いでしょうね、TECO Designもお願いしたい。ここまで言ってくれる人って少ないし、納品主義よろしく線を引いてしまうというパターンが多いだろうし。

 

伊藤:気をつけなくてはいけないのは、これからうちの事務所が大きくなったときに、サービス範囲とクオリティにばらつきが出ることなんですよね。

 

杉野:特別対応ならそうと伝えたほうが良くて、サービスにばらつきが出ちゃうと不満に繋がりますからね。あの人はやってくれたのに、この人は違うっていうのが発生すると、前回の話にもありましたけど「良かれと思ってやったことが、不満に繋がる」ということが起きちゃうんですよね。

 

ある意味シビアになるというか、どこまでがサービス範囲ですよというのを顧問先と握っておくのが必要かなと。

 

伊藤:例えば、給与計算のクオリティが人によって違うのもバラバラなんですよね。

 

人によってぜんぜん違うんだなと実感したことなんですが、年間の平均所定労働時間とか日数を、お客様に対して新しい期になったから・三六協定を出しているから変えるべきですよなんて、言えてる社労士とそうじゃない社労士とでバラバラなんだなと。

 

杉野:サービスの範囲とレベルがバラバラにならないために、社内外で振り返り会を行ったほうが良いですよね。

 

伊藤:そうですよね。自分がおかしいなと思っているのは、給与計算が終わった後に、今月の給与計算・労働時間についてディスカッションの場がないなと。

自分の場合には、働き方改革委員会というサービスを設けて、先月と今月の比較や改善策まで出して、給与計算完了ですというようにしています。

 

杉野:TECO Designを創業して三年経ちますけど、最初の5人位のときは給与計算とか手続きとかって自社でできるし、社労士に依頼するのは高いなと思ってたんですよ。でも、どんどん従業員が増えるに従って、いよいよ入退社の手続き大変だな、士業に頼もうかなと。

 

それから、いよいよわーっと増えた後に、そういうのは社内でできるから、今度は相談に乗ってくれたりアイディアをもらえたり壁打ち相手になってくれることを期待するんですよね。過去は過去だから、データで見れば良いけど、将来を一緒に考えてほしいなと思うわけです。

 

伊藤:それで言うと、仕事の受け方が受け身というか・・・言われたからやるという社労士の方が多いかなという印象があります。例えばミーティングとか会議を設けて、これから先やらないといけないこと・求められることは何か、期限はいつか、マイルストーンは、と計画立てまでできると良いですよね。

 

優秀な事業会社の労務の方は、自分でどうしたら良いかの計画を立てて、枝葉の作業の部分を社労士に依頼してると思うんですよね。

 

杉野:そうなってくると、もう自社でやるから結構ですという思考になっちゃうだろうなあ。頭の中身を整理してくれる人がいることの、ありがたさですよね。

 

伊藤:何だったら、やることの日付を決めてくれるだけでも価値ありますよ。

 

杉野:本当にそう!いつまでにこれをやっていれば100点、ここまでだと80点とか設けてくれるだけでもね。

またまたご質問いただいています。「何人くらいの規模から、社労士に依頼すると良いのでしょうか」とのことですが。

それこそ会社の思いというか、どこまでの規模を目指すかですよね。上場を目指すために、早い段階から専門家に入ってもらおうとかね。

 

伊藤:従業員ひとりもいないのに、社労士と契約されている方もいますよ。

 

杉野:おお。それは、社労士と言うかその個人との契約というか。相談役、何かしら問題を解決してくれる人という感じなんですかね。

 

伊藤:社内に向けて、不満とか不安とか思っていることを吐き出しづらくて、外の人に話したい・頼りたいというお気持ちもあるのかもしれないですね。

 

杉野:さて、今日もそろそろ終了時間ですね。最後にこんなコメントをいただいています。

「杉野さんはたまたま労務の知識があったから、ご自身で何かとできたのでしょうが、普通の方だと難しいかなと思いました」

 

ああ、まあそうですよね。結構、アクロバティックな給与計算している方とかね、いますからね。

 

伊藤:本当はいけないけど、この規模だし従業員との信頼関係をもって良しとするという運用をされている場合も。オススメということではないですが。

 

杉野:ね。では、本日もあっという間に時間が来てしまいました。次回のテーマは、労務担当者のキャリアにしましょうか。またよろしくお願いします!

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